薫。
時雨。
二人の殺意に挟まれて、京一郎は間合いを測る。

それぞれに刀を構えた三竦みを、 館林が無表情に眺めている。

部下である薫をけしかけもせず、止めもしない。

【京一郎】
「両者、まずは下がってください。
どうしても刀を収めないのであれば、私がお相手します」
【薫】
「そいつが改心なんかするもんか!
僕達に盾突いて、天子様の御政道を阻む奴に正義を説く価値もない!」
【京一郎】
「天子様の……?」

御政道を阻むとは、聞き捨てならない。 どういう事か問い直そうとしたが、時雨の声に遮られる。

【時雨】
「何言ってやがる。天子様を利用して、大罪を企んでいるのはお前達だろう」
【薫】
「黙れ、黙れ!」
【時雨】
「お前達こそ国賊だ。己が腐りかけている事から目を逸らし……いや。
もうとっくに駄目になってる奴もいるようだな」
【薫】
「貴様あぁっ! ……馨兄様、刀を!」
【馨】
「ああ」

激昂した薫が、馨に何かを促す。 弟の求めに応じて、兄も刀をかざした。